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猫鳴り 猫鳴り
沼田 まほかる 著
双葉社 出版 / 2007.8(205p)

****日本文学**小説****
お薦め読者年代 高校生以上
ネコ指数 ☆☆☆☆★ 4
人生指数 ☆☆☆☆☆ 5

猫が好きでどうしようもない登場人物の出てくる話ではないし、
かといって、化け猫が恐ろしいことをしでかす話でもありません。

猫のモンとその周りの人間の話です。
モンの気持ちが描かれているわけではなく、
どこにでもありそうな猫と人間の話で、
どこにでもいそうなわけではない、猫のモンの話。

モンはしゃべりだしたりするわけじゃないけれど、
捨て猫だったモンの一生が最後まで描かれています。
そしてその周りの人間(伸枝、行雄、藤治)の一人称三部立てになっています。

猫を飼ったことがあってもなくても読めますが、
明るくなれる話でも、不幸な話でもありません。

登場人物たちは誰かに相談して解決するわけではない悩みを各々持っています。
人間と猫の話。そしてちょっと切なく暗く。

すっきり爽快になれる本ではなかったけれど、
人間のもつ、暗い渦のような深い場所を描いてあるような本でした。

************感想(ネタバレ・注意)************
家のまわりのどこかで、ミーミーとひっきりなしに仔猫が鳴いている。

家の近くで猫が鳴いていて、その声が耳につく。
さっさとカラスにでもさらわれてくれればいいのに。
新聞を取りに出たついでに様子を見に行くと、ヒキガエルのような仔猫がいた。
家に古新聞を取りに戻り、新聞紙に包み込み、ゆるく紙の口を閉じて畑に捨てた。

次の日に鳴き声がした気がして、辺りを見て周る。
肩にパックリと開いた傷がある仔猫は掌に乗るほどの小さい体だった。

伸枝は40歳で初めての子供を授かった。
そしてその子を産まれてくる前に失ってしまった。

その埋め合わせをしているようで、猫をすくい上げたことに嫌悪感を覚える。

伸枝は仔猫の傷の手当だけして、もっと遠くに捨てに行こうと思う。

手当をした猫を捨てた次の日、
小学校3年生ほどの女の子が家の周りをうろうろしている。
少女は、おばさんが仔猫を飼ってくれると思ったから見にきたという。
猫は出て行ってしまったと言うと、探してくると伸枝の家を出て行った。

帰ってこない少女を探しに行き、そして猫も探すことにした。
少女は見つからなかったが、その仔猫は見つかる。

半月ほど経ったある日
再び伸枝の家にやってきた少女に猫が戻ってきた、と伝えてやった。

アヤメと名乗った少女はそのブサイクな猫をモンと名付ける。

ここで第一部は終わるのだけれど、伸枝という人をどうも嫌な人に思えない。

猫を新聞紙に包んで丸めて畑に捨てるなんて、と怒りさえ覚えそうなところだが、
どうしようもない悲しみのようなものに浸ってしまう。

それは伸枝が子供をなくしているからでも、
モンがブサイクだからでも、アヤメがイラッとするからでもなく
どうしようもないことが人生の中で起こるから、という諦めでもなく
この世の中にある誤魔化しようのない大きな悲しみのせいだと思う。

しかたがないと口にして、諦めたふりをすることができればまだしも、
弱い者が虐げられることや、どうしようもない無力さであるとか、
幸せが崩れる瞬間を見る時間すら与えられず失ってしまう表現しようのない脱力感、
簡単に表現できないけれど、きっと誰しもが感じたことがあるだろう焦燥や
忘れてしまったふりをできる方が健康だと思えるような感情だったり
そういう言い表しようのない大きな大きな感情。
涙が出ればまだらくになれるかもしれないのに、と思えるような。

この本を最後まで読んで、
そいういう言いようのない表現しようのない感情が
少しでも整理されたらいいなと思う。

第二部(行雄の章)が特に痛かった。

暗闇から抜け出す本ではない。
暗闇をのぞきこむための本でもない。
それでもいい本だなと思いました。

久々に(夜中の3時まで起きてでも)一気に読み終えたいと思った本でした。
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