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薬指の標本 (新潮文庫)薬指の標本
小川洋子 著 ; 新潮社 出版 / 1997.12(185p)

****小説**日本文学****
おすすめ読者年代 大学生、社会人以上
読みやすさ ☆☆☆☆☆ 5
恋愛指数  ☆☆☆★★ 3
不思議度  ☆☆☆☆☆ 5

楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。人々が思い出の品々を持ち込む「標本室」で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは…。奇妙な、そしてあまりにもひそやかなふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。
(文庫裏表紙より)

薬指の標本、六角形の小部屋の2編収録。

「薬指の標本」。
薬指の先を機械に巻き込まれて失ってしまった主人公。
工場を辞めてふらふらしているときに見付けた張り紙。
それは、「標本室」事務仕事の募集。
主人公は導かれるように標本室で働きはじめます。

標本室にいたのは白衣を着た隙のない男。
面接でわかったことのは、
標本制作のために事務的な仕事をする人が必要だと言うこと。

今まで働いていた工場の2割増の給料で、
8時5時の勤務。休憩時間は昼1時間、午後30分。
ボーナスは年に2回で4ヶ月分。
土、日、祝が休日で、長期休暇もとれる。
悪い条件じゃないでしょ?と言われて働きはじめることになる。

標本と言っても、標本されているのは生き物だけではない。
無生物であっても、何でも標本にするのだ。
依頼主は永遠に閉じこめられた「標本」を標本室に預け、
いつでも標本と再会できると言うわけだ。
そしてその価格は様々だが、大体はフランス料理のフルコース一人分くらい。

そして身寄りのない主人公はその不思議な標本室で働き始めることとなる。


「六角形の小部屋」。
そんなに人付き合いが上手い方だったり積極的な性格でない私が、
通い始めたばかりのスイミングクラブで、
どうしても気になる中年女性ミドリさんを見つけてしまう。

デートの約束に遅れそうだと言うのに、どうしても声をかけずにいられない。

ミドリさんを尾行して行き着いたのは「社宅管理事務所」。
そこにいた男ユズルにどうぞと押し入れられるようにして入ってしまう。
建物の中には謎の六角形の小部屋があった。


************感想(ネタバレ・注意)*************
標本にするというのは、現在進行形のものが変質していく「未来」を
永遠に「過去」に閉じこめると言うことだ。
自分自身が変わってしまっても、標本は変わることがない。

標本室では生きていたものも、形のないものも標本してしまう。
そして依頼者はまた自由にその標本を見に来ることができる。

大して宣伝もしていないのに導かれるように客は標本室にやってくる。

作業をするのは白衣を着た男、弟子丸氏。
あるときは「きのこ」を、あるときは「骨」を、そしてあるときは「音」を。
標本にしてしまった。

ある日、主人公は弟子丸氏から靴をプレゼントされ、
その靴はあまりにピッタリで、靴磨きの職人からは
「一週間に一度くらいにしておきな」と言われる。
靴に足を侵されてしまうから、と。

『博士の愛した数式』とは少し違う印象かも。
とてもサディステックな印象を含むものの、
恋の物悲しさみたいなのも描かれていて
標本室というありそうでない仕事の話に引き込まれます。

もう一本の「六角形の小部屋」は、
語り小部屋という移動式の部屋の話である。
利用するものは1人でその中に入り、そして語る。
3分ほどの人もいれば30分の人もいる。

その部屋の効用を説明するのは難しい、とミドリさんは言う。

主人公がスイミングに通い始めたのは背骨の痛みが原因だ。
婚約者美知男に憎しみさえ覚え、婚約破棄。
スイミングクラブでミドリさんを見つけ、
導かれるようにして出会った小部屋の中で主人公が語るのは美知男についてだ。

誰にも言えないことがある。
無意識に、口にしてはいけないと自制してしまうことがある。
それを開放してくれるのが語り小部屋の存在だ。

ハッピーエンドともアンハッピーエンドとも言い切れない作品だけれど、
二本とも、話に引きずり込まれてしまったといった感じでした。

これはきっとまた読み返すだろうと思えるような作品です。
かなりおすすめ。
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